Q7. 飲酒習慣のある女性は妊娠しにくい?

Q.飲酒習慣のある女性は妊娠しにくいと聞きました。飲酒をはじめ、妊娠に向けて注意すべき生活習慣があれば教えてください。

「35歳で妊娠を希望しています。妊娠には不利な年齢になってきたため、少しでも妊娠しやすい体にするために、日常生活における習慣を見直したいと思います。ところで私は時々お酒を飲むのですが、飲酒は妊娠率に影響を与えるのでしょうか? 飲酒のほかにも、妊娠のために注意したい生活習慣があれば教えてください」

A.毎日ビールを3本以上飲むと妊娠率に影響の可能性あり

初期妊娠中の飲酒は胎児の成長に影響を与えるため、妊娠が判明した時点で禁酒が原則ですが、不妊治療をしている人にとって飲酒が妊娠の確立を下げる可能性があるのかどうか、気になるところです。

少量の飲酒を楽しむ程度であれば、特に妊娠率に影響が出ることはないとされていますが、海外で実施された研究では、1週間に缶ビールを約3本~6本飲んでいる人を非飲酒者と比較すると、妊娠の可能性が低下するという調査結果が出ていると言います。

参照元の亀田IVFクリニック幕張のブログには、「多量の飲酒が妊娠確率低下の予測因子であることを示した先行研究を同じ結果」であったことが書かれています。大量の飲酒は妊娠率低下のリスクになり得ること確かですが、少量の飲酒が直接的に不妊の原因になるとまでは言い切れないようです。

参照元:亀田IVFクリニック幕張公式サイトブログ「女性のアルコール摂取量と不妊の関係(論文紹介)」

https://medical.kameda.com/ivf/blog/post_385.html

これまで以上に健康な体づくりを意識する

いわずもがなではありますが、これまで以上に健康な体になるような日常生活を送る努力が不可欠です。栄養バランスのとれた食事をして、しっかり寝る。適度な運動を心がけ、ストレスを感じない生活を送る。そして暴飲暴食やカフェインの過剰摂取、喫煙など体に悪影響を与える習慣をやめる。

言うのは簡単ですが、これまでの生活習慣を見直して妊活に向き合うためには、それなりに覚悟が必要です。とはいえ、なにも特別なことをしなければいけないというのではなく、ごくごく一般的なものばかり。以下でもう少しくわしく見ていきましょう。

葉酸を含む栄養バランスのよい食習慣を心がける

妊娠しやすい体づくりでよく耳にする「葉酸」。厚生労働省でも妊娠前から葉酸のサプリメント摂取を推奨しています。妊娠初期に葉酸が不足してしまうと、胎児の神経系の発達に影響することがわかっているからです。このほかにも、カフェインなどの刺激物を避ける、先述したようにお酒は少量にとどめる、暴飲暴食を避け、肥満につながるようなスナック菓子などのジャンクフードは控える、といった心がけが大事になります。

だからといってダイエットのために食事制限をするのではなく、規則正しく1日三食、たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素をしっかり摂れる栄養バランスのとれた食事をしていくように努力しましょう。

参照元:東京都福祉局支援ポータルサイト東京都妊活課「妊娠のために知っておきたい知識」

https://www.ninkatsuka.metro.tokyo.lg.jp/ninshin-shokuseikatsu/

不妊治療を開始する=禁煙する

不妊治療を始める前から始まると考えるべきことが「禁煙」です。母となる女性だけでなく、男性パートナーにも禁煙が求められています。

まず喫煙によって生殖能力の低下や子宮外妊娠のリスクが指摘されており、妊娠後にも胎児に悪影響があることがわかっているからです。受動喫煙による悪影響も回避する必要があります。喫煙者は非喫煙者と比較すると妊娠するまでの期間が長くなることがわかっているため、不妊治療には禁煙が必須条件になっています。

タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素、酸化物質(活性酸素など)の有害物質は妊婦だけでなく胎児や胎盤の低酸素状態や胎盤の老化促進など百害あって一利なし。科学的根拠に基づいたさまざまなリスクがありますので、すぐにでも禁煙してください。

参照元:厚生労働省e-ヘルスネット「女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-003.html

極端なダイエットではなく適正な体重維持を目指す

別のページでも詳しく説明した通り、肥満は妊娠率を低下させる要因となります。とくに内臓脂肪型の肥満の場合は、卵子の成長や排卵、卵子の取り込みに障害が出る可能性が高くなるといいます。また逆にやせすぎていても妊娠しにくいとされています。

不妊治療の専門家によれば、流産率に関してもBMIによる違いがあり、健康と言われるBMI22がもっとも流産率が低く、BMI18.5未満とBMI25以上で流産率が高くなることがわかっています。適正体重を維持するためには、なるべく主食である糖質を減らし、おかずの量を増やすなど、食事の見直しをしてみてください。

具体的には、ご飯やパン、麺類などの炭水化物を1/3程度に減らし、おかずの量を1.5~2倍に増やすといった工夫をしてみるのもよいでしょう。

参照元:株式会社シオン「不妊治療の先生に聞いてみた」

https://funin.clinic/posts/oak-1

適度な運動と良質の睡眠も重要

積極的に運動をすることで自律神経のバランスが整い、生理周期が安定的になります。また運動をすると血行が良くなるため、卵巣に十分な酸素と栄養素が届けられて質の良い卵子が育つようになります。

普段デスクワークが中心で体を動かす機会が少ない方は、この機会にウォーキングなどの軽い運動から始めてみると良いでしょう。運動をする時間がない人は、なるべく体を温めて血行改善を図ってください。暖かい服装をする、または温かいお風呂にゆっくりと浸かる、などが効果的です。

人を入眠へと導くのは、メラトニンというホルモン・メラトニンには抗酸化作用があり、卵子の質を向上させることがわかっています。メラトニンは卵胞液中にも高濃度に存在していて、卵子などの酸化を防いでいるとされています。

いまそのメカニズムの解明も進んでいますが、メラトニンの強力な抗酸化作用があり、卵子を酸化ストレスから守るも言われています。実際にメラトニンを人為的に投与したところ、卵子の質が向上して妊娠率が上がったという報告があり、卵子の質の向上を目的とした不妊症患者に対するメラトニン投与もなされているほどです。

メラトニンの分泌量を増やすために最も大事なことは、一定のリズムで生活をし、質の良い睡眠を十分にとること。朝陽を浴びて夜は早めに寝るなど、体内時計通りに生活することが大事。就寝前にスマホを見ると体内時計を調節しているメラトニンの分泌が低下することがわかっていますので、寝室でスマホを見るのはやめたほうがよさそうです。

参照元:科学研究費助成事業データベースKAKEN「メラトニンによる卵子の質向上メカニズムの解明」

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21K09517