Q7. 排卵誘発剤の注射による腹痛、卵巣過剰刺激症候群の可能性は?

Q.排卵誘発剤の注射を打った後、腹痛やお腹の張りを感じます。卵巣過剰刺激症候群の可能性はありますか?

「体外受精に向けて排卵誘発剤の注射を続けていたところ、一昨日から腹痛やお腹の張りを感じるようになってきました。前回の体外受精のときも同じように腹痛があったのですが、今回よりも症状は軽かったです。

現在の私の症状は、卵巣過剰刺激症候群でしょうか? また、もしその可能性があるとしたら、病院ではどのような方針で不妊治療をしていくのでしょうか?」

A.卵巣過剰刺激症候群の可能性があるのですぐに主治医に相談を

卵巣過剰刺激症候群の可能性が高い

排卵誘発剤のHMG注射を使用しているとき、腹痛やお腹の張りを自覚した場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の可能性が高いと言っていいでしょう。

卵巣過剰刺激症候群を発症すると、排卵誘発に伴い卵巣が膨れ上がったり腹水が溜まったりなど、さまざまな自覚症状が出ます。卵巣過剰刺激症候群は35歳以下の若い人、また痩せ型の人に生じやすい症状とされています。

症状が軽度であれば、特に対策を取らずに安静にして様子を見ているだけで良い場合もありますが、まずはどのような自覚症状があるか正確に担当医に伝えることが重要です。自己判断で様子見をするのは推奨できません。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)によれば、「中等症のOHSSが認められたにもかかわらず不妊治療を続け、重症化してしまう」事例も少なくないとし、腹部痛や卵巣腫大などの症状が出た場合は卵巣過剰刺激症候群の疑いを持ち、薬剤投与中止などの適切な対応をとることが求められています。

参照元:株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン GemMed公式サイト「排卵誘発剤等による『卵巣過剰刺激症候群』が散発、下腹部痛・急激な体重増・卵巣腫大などに留意!—PMDA」

https://gemmed.ghc-j.com/?p=47511

卵巣過剰刺激症候群の典型的な症状

卵胞過剰刺激症候群と疑われる症状には下記のようなものがあります。最終的に医師が診断するものではありますが、自覚症状で下記に当てはまるものがある場合は、すぐに主治医に報告するようにしてください。

  • 卵巣が腫れて肥大する
  • 腹水がたまってお腹が張る
  • 体重が急激に増える
  • 吐き気を感じる
  • 尿量が減る
  • お腹周りが膨らんで腹囲が増加する

卵巣過剰刺激症候群は不妊治療に用いる排卵誘発薬によって引き起こされる症状ですが、通常の不妊治療で感じる体調不良の延長上と考えて我慢してしまうと、重篤な症状を招きかねないものです。したがって少しでも上記のような自覚症状がある場合は、医師や薬剤師に相談して早期に対応することが大事です。放置しておくと腎不全や血栓症などさまざまな合併症を引き起こすこともありますので、十分に注意をしてください。

参照元:PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)公式サイト「卵巣過剰刺激症候群(PDF)」

https://www.pmda.go.jp/files/000240156.pdf

卵巣過剰刺激症候群への対応は?

卵胞過剰刺激症候群と診断された場合には、いくつかの対処方法があります。

HMG注射の量を少量から少しずつ増やしていく方法や卵巣過剰刺激症候群を起こしにくいマイルド法への切り替え、HMG注射の量を減らして排卵誘発剤の副作用を軽減させる薬剤を使用する、といった方法などがあります。いずれの方針を採用するかについては、患者さんの年齢や卵巣機能等を勘案のうえ、医師と相談しながら決めていくことになります。

参照元:田園調布レディースクリニック公式サイト「副作用と対策」

https://www.denentoshi-lady.com/in-vitro-fertilization/side-effect/

重症化すると危険なので早急に医師に相談を

卵巣過剰刺激症候群と診断を受けた場合、またはその疑いを自覚した場合、早急に医師に相談のうえ対応を検討してください。

そのまま排卵誘発剤の注射を続けた結果、重症化してしまうケースがあるからです。重症化した場合、嘔吐、下痢などが始まり、やがて血栓症や呼吸困難、腎不全などに至る恐れもあります。HMG注射をして排卵の後、3~7日ごろに息苦しさ、腹水、手足のしびれ等を自覚した場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

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