自然妊娠と違いがない「人工授精(AIH)」とは?

精子を直接子宮の中に入れ、卵子と出会いやすくする

タイミング法で妊娠しない場合に、次のステップとして人工授精に進みます。採取した精子から元気な精子だけを選抜し、直接子宮に注入することで、精子と卵子の出会う確率を上げる治療法です。「人工」という言葉を使いますが、限りなく自然妊娠に近い治療法です。

もっとくわしく人工授精(AIH)

体の外で卵子と精子を出会わせて受精させる治療法です

体外受精では男女それぞれに卵子、精子を採取し、さらに精子は洗浄・濃縮して質のいいものを抽出します。卵子をシャーレに入れ、上から精子をまぶして自然に受精するのを待ちます。受精した卵子を十分に育てた後、女性の子宮に戻すのが体外受精の流れです。不妊の多くは受精がうまくいかないのが原因ですが、そのプロセスを体の外で確実に行うため妊娠する確率は大幅に上がりますが、卵巣刺激剤や麻酔などを使うため女性の体への負担は大きくなります。

こんなケースの
不妊に効果的
  • 精子に何らかのトラブルがある
  • フーナーテストが良くない
  • 勃起や射精などの性機能に問題がある
  • 子宮頸管粘液が十分でない
こんなケースの
不妊に不向き
  • 自力による排卵がない
  • 両方の卵管が詰まっている
  • よりステップアップが求められるほどの高齢
  • 精子に問題がない(精子の侵入をサポートする治療法なので、精子に問題がない場合は人工授精を行なう必然性がない)

人工授精の前に行う検査

  • 超音波検査
  • 尿検査
  • 血液検査

人工授精の流れ

排卵時期を予測
まずは排卵時期を予測することから始めます。基礎体温をつけ、低温期の最終日から上昇期の数日を排卵日を推定し、大体の排卵時期を予測。月経周期が28日型の場合、黄体の14日という寿命に照らすと、月経周期14日目が排卵日と推定できます。月経周期が規則的ではない場合は、医師の診察のうえで排卵日を推定していきます。
卵胞の超音波検査で正確に排卵日を予測
推定した排卵時期が近づいてきたら、次に経膣の超音波検査を行い卵胞の直径を測定します。自然周期を前提とした場合、卵胞の直径が12mmほどに成長すると、後は1日約2mmのペースで成長するとされています。卵胞が20mmに成長した時点、すなわち直径12mmを確認してから4日目を過ぎた時点で排卵が起こると推定します。
排卵期特有の頚管粘液の分泌が増えてきたら、その日に性交渉
子宮頸管は、普段は子宮への細菌の侵入を防ぐために乾き気味となっています。しかしながら排卵が近づいてくると、精子を子宮内に入りやすくするよう、子宮頸管は頸管粘膜と呼ばれる透明なおりものを分泌します。この頸管粘膜を確認できた日は、その日の夜に夫婦生活を行なってみましょう。
排卵予測日の数日前から排卵検査薬を使用開始
排卵が予測される数日前から、多くの施設では排卵検査薬(尿中LH検査薬)の使用を開始します。排卵の数日前から、というタイミングで使用を開始することがポイントです。排卵が近づきすぎてから使用を開始してしまうと、排卵を促す黄体化ホルモンの陽性反応を見逃してしまうことがあるからです。
排卵検査薬で陽性反応が出たら、精液の採取
黄体化ホルモンの放出(LHサージと言います)が確認されてから約36時間で排卵が起こると言われています。LHサージのピークから24時間です。この際、排卵検査薬によって陽性が確認されたら、ご主人に精子を提供してもらい人口受精(AIH)の処置へと入ります。なお、人口受精(AIH)の当日にご主人に同行してもらい、病院にて採精してもらうこともあります。
精液を洗浄濃縮処理
ご主人から提供された精子は、感染予防のために、いったん洗浄濃縮処理が行なわれます。ご主人の生殖器内に炎症があった場合、精漿(精液のうち精子を除いたもの。前立腺やカウパー腺液など)に雑菌や白血球が混在していることがあるからです。洗浄濃縮処理には、密度勾配遠心法やスイムアップ法が用いられます。
できるだけ速やかにAIHを受ける
ご主人から提供された精子の洗浄濃縮処理が終了したら、妊娠率を高めるために、できるだけ速やかに人口受精(AIH)を受けるようにしましょう。なお人口受精(AIH)当日、多くの施設では妊娠をサポートするためのhCGの注射を行なっています。
超音波による排卵確認
人口受精(AIH)を受けた翌日、ふたたび病院に行き超音波検査を行ないます。タイミングが合っていたかどうかを検証するための排卵確認です。人工授精(AIH)を受けた際には明確に確認できていた卵胞が、翌日の超音波検査において萎んだり消えたりしていたならば、タイミングが合っていたということになります。
妊娠の成立
妊娠5週目に胎嚢(赤ちゃんが治まっている袋)が確認されます。この時点で、臨床的妊娠の成立となります。臨床的妊娠から約1週間後には、胎嚢の中に白い米粒のようなもの(赤ちゃん)が確認でき、ピクピクと心拍が確認されます。この確認をもって妊娠成立となります。ここからの流産率はわずか数%。いよいよ赤ちゃんの誕生が現実味を帯びてきます。

人工授精の妊娠率

人工授精による妊娠率は5~10%
人口受精という言葉から一般にイメージされるのは、何やら大掛かりな不妊治療の様相です。しかし、実際に人口受精で行なっている医療行為は、簡単に言えば、①精子を洗浄濃縮する、②精子を子宮の奥に注入する、の2点のみ。より簡単に言えば、自然の夫婦生活に比べて、精子をわずか10cmほど奥に注入するだけのことです。その意味において、人口受精を自然妊娠と捉える医療関係者もいるほどです。逆に言えば、何らかの困難な不妊理由があった場合、人口受精では成果を得られない場合も少なくありません。人工授精による妊娠率は5~10%。敬遠するほど大袈裟な治療でもなければ、過度に期待を寄せるべき治療でもないことを理解しておきましょう。

人工授精の有効回数

有効回数を5回目(6回目)までが目安
人口受精で妊娠をした患者さんの約9割は、5~6回目までの治療で妊娠成立にいたっているという報告があります。そのため多くの医療施設では、人口受精の有効回数を5~6回と設定しているようです。ただし、残り1割の患者さんにおいては7回以上の治療を経て妊娠したということでもあるので、6回を終えたからと言って諦める必要はありません。一般に有効回数とされる5~6回の治療を経ても妊娠に至らなかった場合、以後も人口受精を続けることに有効性があるのかどうか、またはステップアップしたほうが良いのかどうかなど、担当医としっかり話し合うようにしましょう。なお、一時的に顕微授精などにステップアップしたのち、再び人工授精に戻すという流れも選択可能です。

人工授精の副作用

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
排卵誘発剤の影響で卵胞が過剰に増えてしまう副作用です。お腹がはる、腰痛、息苦しさ、喉が渇くなどの症状が現れることがあります。
排卵誘発剤を使用する際は、医師から副作用について詳しく説明を受けましょう。
多胎妊娠
双子や三つ子の妊娠のことを多胎妊娠と言います。人工授精における排卵誘発剤の刺激を原因とし、多胎妊娠が見られる場合があります。一般に多胎妊娠は母子ともに合併症のリスクが上がるため、理想的な妊娠はないと考えられています。初期妊娠の段階で双子の片方が亡くなったり、また胎児発育不全が見られることもあります。
出血
カテーテルで子宮に精子を注入する際、処置の後に子宮から少量の出血が見られることがあります。
感染
卵管や子宮、腹腔内に感染を確認することもあります。そのため人工授精後の数日間、抗生剤投与を行なう病院もあります。

人工授精のちびQ&A

人工授精の際に男性が気をつける点は?
質のいい元気な精子を採取することが成功に近づくカギです。精子は熱に弱いため、自宅で採取する場合はできるだけ温度変化を与えず、採取後3時間以内に病院へ持って行きましょう。
痛くないですか?
カテーテルを子宮に挿入する際に少し痛みを感じることがありますが、ほとんどの場合痛みはありません。
人工授精の妊娠率はどれくらいですか?
人工授精で妊娠できる確率はおよそ10%といわれています。 しかし、3~4回ほどでだいたい90%以上結果が出ると言われています。
精液の洗浄・濃縮など調整はなぜ必要ですか?
精液に含まれる精子には奇形のものや運動率の低いものが含まれています。 精液を遠心分離器で洗浄・濃縮して、質のいい元気な精子だけを残すことで、子宮の中で受精できる確率をより高めます。
人工授精で成功しなかった場合、何回目くらいで次のステップに進めばいいでしょうか?
人工授精を4~5回続けると、9割近くのカップルが妊娠するといわれています。5回以上続けても結果が出ない場合は、ステップアップを検討します。女性が30代以降の場合は、妊娠率を上げるために早めのステップアップを考えましょう。